日本が大学入試改革をやる意味とは何なのか?①

日本が大学入試改革をやる意味とは何なのか?① -海外駐在員の子女にみた教育のあり方-

 私が香港に住んでいた90年代の話である。今から21年前の1997年に香港は中国に返還された。それ以前の香港は、英国色の色濃く残る街であった。まだ、九龍半島のカイタック(啓徳)空港にビルすれすれで降りる飛行機があった頃、日本企業は活気があり香港の日本人社会も大きな力を持っていた。

 そこにイングリッシュ・スクール・ファウンデーション(英基学校協会)、通称ESFという幼稚園小中高校の学校群があった。英国領であった香港の英国式準パブリックスクール(半官半民学校)である。その卒業生の90%以上は世界の名だたる大学に進学して、その教育成果を不動のものにしていた。ESFのカリキュラムは英国式のAレベル(大学入学資格試験)やGCSE(中等教育終了資格試験)に向けて組まれたものである。海外駐在員の子女には日本人学校があったが小中学校のみで、高校に進学する時点で日本の高校かインターナショナル・スクール進学かを選択せざるを得なかった。子どもの高校進学のために夫を単身赴任で残し日本帰国するか、また寮付きの学校を選んで子どもだけ帰国させるかしかない。現地に残ってインターナショナル・スクールに進学しようとすると、学費が高く一定の英語力がないと進級卒業すらままならなくなる。しかし、先見の明を持ったというか、駐在期間の長い家庭は、費用も安く実績のあるESFを早い段階で選択した。早い段階というのは日本で言うところのお受験と同じで小学校もしくは幼稚園の段階からESFを選んで通学通園させていたということである。私もそうであったがバブルが弾け経済が混迷する日本には会社の命令以外で帰国を希望する家庭は少なかった。それほど外から見た日本が魅力的に見えなかった時期である。日本人学校は月謝5万円、インターナショナル・スクールは4倍の20万円、ESFは7万円くらいであった。企業の教育補助が無い家庭でもESFは手の届く範囲にあったのである。

 ESFは英国式のカリキュラムで安い学費で英語が身につく上に卒業進路も世界屈指の実績を誇っている。そんなにおいしい学校だったら、日本人学校なんかよりESFを選ぶんじゃないの?しかし、そこが教育に対する浅はかな考えなのだ。入学させたら学校がやってくれる、この大船団主義、所属主義というのが日本人の悪い癖で東大に入ろうが早稲田にいようが、そこでしっかり自分を磨かねばならない。欧米の大学は入るより出るのが難しいとよく言われるが、それは当たり前であって、入ってしまえばこっちのものと考える向きの方がよっぽど高等教育をなめている。現在、社会は最終学歴志向から実力学習歴志向に評価が変わりつつある。これが現在の入試改革に繋がっているのは明白であり、日本が大きく評価体系を変えようとする理由がそこにある。

次回は実際の世界基準の教育評価をご紹介する。

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